2014年7月27日日曜日

七物降下湯は高血圧の薬なの?

今回は七物降下湯(しちもつこうかとう)です。多少なりとも漢方をかじった人なら必ず知っている大塚敬節氏ですが、その大塚さんが自分のために作った処方が七物降下湯です。日本の漢方を象徴する一人だと思いますし、また、日本漢方を混迷へと導く一役を買った人物だと思っています。このことはまた別の機会に何処かで書くとして、今回の七物降下湯が実際にエキス剤としてドラッグストア、薬局で売られ医療用漢方薬としても使われているのも事実です。その効能と使い方が現実の効果に照らしてみて、どんなものかと考えてみたいと思います。
いつものようにOTC漢方薬の効能効果を見てみますと“体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のないものの次の諸症:高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重) "とあります。
幸いなことに“高血圧に伴う随伴症状”に用いるようで“高血圧”そのものに効くとは書いてありません。その通りで七物降下湯は高血圧症の血圧を下げません。それどころか血圧を上げる可能性さえあります。絶対に誤解しないで下さい七物降下湯は高血圧の薬ではありません。




この処方は血液を作り浄化する四物湯に釣藤鈎、黄柏、黄耆を加えたと考えて良いでしょう。本人もそのようなことを書いていたような気がします。
四物湯は結局のところ体液量を増やすわけですから血圧を上げる可能性を持ちます。それ以前に衰弱して干からびそうな人に使う薬ですからね。釣藤鈎は頭痛のため、黄柏はのぼせを取るために入れたのでしょう。
黄耆は、黄耆の作用で代表的なのは升提作用、下がってはいけないものを持ち上げる作用、場合によってはより積極的に上げようとします。
もちろん血圧に対しても、下がっていれば上げるし、上がっていても、より上げようとしてしまう可能性も持ちます。
なぜ血圧を上げる黄耆が入っているのでしょう。しかもベースは四物湯です。もはや七物降下湯が高血圧の薬でないことは疑いようもありません。






本当のことを言うと七物降下湯は脳梗塞・脳出血後の後遺症改善の目的で作られています。ですから、もはや高血圧ではない人に使います。倒れて衰弱して気力も萎え体の動きも不自由になってしまった方に使われる方剤です。たしか大塚氏も血圧で倒れたあとにこの処方を作ったかと思います。
それがいつの間にか七物降下湯=高血圧という擦り替えが行われたのかと思います。
OTCだけでなく医療用の七物降下湯の添付文書にも効能は高血圧の随伴症状であって高血圧に効く、血圧を下げるとは書かれていません。
非常に適用範囲は狭いですが、万が一に脳梗塞、脳出血で倒れ、気力がなく貧血気味で体が衰弱し、頭痛・のぼせが主な悩みであれば七物降下湯を試して下さい!



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2014年7月20日日曜日

柴胡桂枝乾姜湯=誤治を治すはずが...

今回は柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)です。
この処方も誤解されて使われることが多いかもしれません。名前からしても内容から見ても小柴胡湯の派生方剤ですので、その適応体質は小柴胡湯と同じです。熱虚証(ねっきょしょう)という証が第一の条件になります。病気に対する抵抗性が低く、余分な熱産生あるいは熱による病を患った状態です。
一般用医薬品・OTC漢方薬の効能効果を見てみると“体力中等度以下で、冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れ、ときにねあせ、頭部の発汗、口の渇きがあるものの次の諸症:更年期障害、血の道症、不眠症、神経症、動悸、息切れ、かぜの後期の症状、気管支炎”とあります。


かなりビックリですね。いきなり冷え性ときましたね...。柴胡桂枝乾姜湯の構成生薬の中心は柴胡と黄芩です。疑いようもなく体を冷やす生薬です。貧血気味?貧血を治す作用、血を作る働きを持つ生薬はひとつも入っていません。
漢方エキス製剤の効能効果は通常の化学成分の医薬品の効能効果との整合性を図ろうとしたためか、おかしな表現がなされているものが少なくありません。なかでもこの柴胡桂枝乾姜湯の効能効果は以前から気になっていましたが酷いですね。
間違った漢方薬の使い方を誤治(ごち)と言います。正しく証を見立てることが出来ずに本来は用いるべきではない処方を使ってしまうことです。柴胡桂枝乾姜湯の場合は効能効果通りに使えば間違いなく誤治になります。冷え性は悪化するし貧血はいつまでたっても治らないでしょう。





では、柴胡桂枝乾姜湯は何の薬か?
この柴胡桂枝乾姜湯は風邪薬です。正確に言うと、本来は取るべきではない方法で誤って風邪を治そうとして、かえって悪くなった、あるいは異なる症状に向かってしまった場合に使う薬です。具体的に言えば熱証の風邪なのに葛根湯などの温性の発散剤などで悪化させ、かえって風邪を深いところに押し込んでしまった状態です。まさに誤治です。
風邪が体表ではなく体の内部に押し込められ発汗により水分異常(津液不足)が起きて不眠症や神経症、更年期様症状や動悸・息切れのような自律神経失調症状を表しているものの治療を目的に作られたのが柴胡桂枝乾姜湯です。
このことを応用して、長期間のストレス等を受け続けていたり、急激なストレスで体調を崩したりした場合の、不眠症・神経症や、自律神経失調症的な症状に柴胡桂枝乾姜湯を用いることが出来ます。
ただし、この場合は冷え性などではなく、のぼせたり・体が火照ったりしやすく、喉が渇くことが前提条件になります。いわゆる更年期障害もあてはまりますね。水(津液)の不足がありますから、肌は乾燥してカサつきがちです。


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2014年7月13日日曜日

五苓散:水を出す漢方薬

今回は五苓散(ごれいさん)です。
一言で言ってしまえば‘不要な水を出す’漢方薬です。いつものようにOTC薬の効能効果を見てみましょう。“体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔”とあります。体力云々は虚証・実証を表現したいのだと思いますが、これは病気に対する抵抗性(体力?)と病気の侵襲力との関係ですので、体力云々だけで判断できるものではありません。ちなみに五苓散は虚証用方剤です。摂取した水分量を処理するには処理能力が不十分なために下痢、浮腫みのような症状が出ています。


さて、のどが渇いて尿量が少ないと前提されていますが、誤解を招きやすい表現です。単純に水分不足で、極端に言えば脱水状態でも喉が渇き尿は出ません。五苓散を使うべき状態とは真反対です。熱・寒を間違えて使っても大きく問題はない処方なので‘津液’についてまで踏み込まなくても良いかと思いますが、生脈散の項で少し触れていますので参考にして下さい。不要な水が多すぎるために、相対的に必要な水(津液)が不足しているために感じる喉の渇きが五苓散の対症になる喉の渇きです。



病名・症状として挙げられてる事柄は適切だと思います。“水様性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔”であれば五苓散で効くと、西洋医学的、病名的な判断で使って頂いても構わない方剤だと思います。実際に、本来の対症になる熱虚症以外の状態で使っても一定の効果は出ています。
最後に、二日酔いの状態が五苓散を使う典型です。さんざん水?を摂ったのに喉が渇いているし浮腫んでいるっぽいし頭は痛いし気持ち悪い・・・まさに二日酔いですね。一度試してみてください!


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2014年7月6日日曜日

夏風邪の漢方薬は藿香正気散

今年の梅雨は例年以上に雨が降っているようですが、7月に入り梅雨明けも近いことと思います。さて、今回は藿香正気散(かっこうしょうきさん)です。一言で言えば夏風邪の漢方薬ということになります。
いつものようにOTC(一般薬)漢方薬の効能効果を見てみましょう。“体力中等度以下のものの次の諸症:感冒、暑さによる食欲不振、急性胃腸炎、下痢、全身倦怠”とあります。



季節によって流行する風邪のウィルスも異なってきますが、漢方的に見ても冬と夏では風邪の症状も違ってきます。以前、銀翹散について書いた際に『暑い風邪』『寒い風邪』と言う表現を使いました。簡単にいえば『暑い風邪』は喉が痛んで体が火照ると言った熱さを感じる症状が主な風邪です。『寒い風邪』は鼻水が出て寒気が強いと言った寒さを感じる風邪です。やはり冬は『寒い風邪』が多くなります。かと言って夏場は『暑い風邪』ばかりかというと、そうでもありません。冷房の冷えや朝の冷気にあたることで『寒い風邪』にかかることも少なくありません。藿香正気散は夏の『寒い風邪』に使う漢方薬です。症状としては、寒気を伴う軽い発熱、食欲不振、軽い胃腸炎、鼻水、軽い咳に効果があります。

さて、夏ですから冬のような強い悪寒を伴う風邪は少ないです。でも同じ『寒い風邪』なら、その代表的な漢方薬の葛根湯でも良さそうなものです。しかし、藿香正気散の存在価値があります。葛根湯は強い発散作用で発汗解熱させる漢方薬です。寒気がするとは言え夏ですから、気温湿度は高いので強く発汗させたら汗が止まらなくなり、かえって体力を消耗させ、下手をすれば風邪をこじらせてしまいます。藿香正気散は軽い発散作用を持ち胃腸を温め、咳のど鼻の症状を和らげる生薬を加えています。弱めの作用であることがかえって夏の『寒い風邪』に丁度良い効果を発揮します。
藿香正気散の販売メーカーも少ないですが、手に入らなければ香蘇散で代用はできるかなと思います。ちなみに夏の『暑い風邪』も銀翹散で大丈夫です。




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